姥捨山
昔々、あるところに、年をとった人を山に捨てなければならないという決まりのある国がありました。
この国では、年寄りはもう働けないから、食べ物をわけるのはもったいない、と考えられていたのです。
ある村に、一人の若者とその母親が住んでいました。母親はとてもやさしく、子どものころから若者を大切に育ててくれました。けれど、母親も年を取り、とうとう山へ捨てなければならない年齢になってしまいました。
若者はどうしても母を捨てるなんてできませんでしたが、国の決まりには逆らえません。ある日、母を背負って、山へ向かいました。
山道はけわしく、岩がごろごろしていました。母親は背中で、ひとつひとつの曲がり角に枝を落としていきます。
「お母さん、なぜ枝を落とすのですか?」と若者が聞くと、母親は静かに答えました。
「お前が帰り道に迷わないように、道しるべにしているんだよ」
その言葉を聞いて、若者は涙を流しました。捨てられるというのに、自分のことを心配してくれる母のやさしさに胸がいっぱいになったのです。
若者は山のてっぺんに着くと、しばらく考えこみました。
「やっぱり、こんなことはできない」
そう言って、母をもう一度背負い、山を下りて家へ連れて帰りました。若者はこっそりと、母を家の下の物置にかくして、食べ物や水をこっそり運びながら、ひっそりと二人で暮らすことにしました。
ある日、その国の王さまが、他の国から難しい問題を出されました。
「おまえの国に、長さも重さもない糸を使って、一本の縄を作ってみせよ。それができなければ、おまえの国を攻めるぞ」
王さまは家来たちに相談しましたが、だれも答えがわかりません。国中が困っていました。
そのとき若者は、その問題を母に聞いてみました。すると母はにっこり笑って、こう言いました。
「それなら、蚕の糸を灰の中に通してごらん。すると、灰の中に残った糸がつながって、軽くて長い縄になるよ」
若者はそのとおりにして、見事に問題を解決しました。王さまはたいへん感心し、
「誰がそんなすばらしい知恵を教えたのか?」とたずねました。
若者は勇気を出して、母のことを正直に話しました。国の決まりを破って、母を生かしていることを打ち明けたのです。
王さまはしばらく黙って考えていましたが、やがて言いました。
「年寄りには長年の経験と知恵がある。そんな大切な人たちを捨てるような国ではいけない」
それからというもの、この国では年寄りを大切にするようになり、山に捨てるという決まりはなくなりました。
若者と母親は、安心して、これまでどおり仲良く暮らしましたとさ。
おしまい。
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- 姥捨山(うばすてやま)-日本
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