文福茶釜
昔々、あるところに、びんぼうなおじいさんがいました。おじいさんは、毎日山にしばかりに行き、街へたきぎを売りに行って、なんとかくらしていました。
ある日のこと。おじいさんが山からのかえり道、道ばたにぼろぼろの茶がまがころがっているのを見つけました。
「おやまあ、こんなところに茶がまが……。」
おじいさんはそれをひろいあげてみました。すこしへこんでいましたが、ちゃんと使えそうです。
「これは、お寺の和尚さんにでもあげようかのう。」
そう言って、家へ持ちかえりました。
ところが、その夜のこと。
おじいさんがねむっていると、なにやら台所からゴトゴトと音がしました。ふしぎに思って見に行くと、なんと、あの茶がまがみずからふたをもちあげ、あしを出し、しっぽをふりながら、たぬきのすがたになってとびはねているではありませんか!
「ひゃあ! 化け物じゃー!」
おじいさんはおどろいて、ひっくりかえりそうになりました。でも、たぬきの茶がまは、こわい顔ではなく、にこにことわらっていました。
「おじいさん、こわがらないで。わたしはぶんぶくちゃがま。たぬきだけど、ちゃがまでもあるんだよ。わるさはしないから、いっしょにくらしておくれよ。」
おじいさんはおどろきましたが、やさしい目をしたぶんぶくちゃがまを見て、だんだんこわくなくなってきました。
「まあ、よいかのう……。わしもひとりじゃさびしいしな。」
こうして、ぶんぶくちゃがまとおじいさんは、いっしょにくらすことになりました。
しばらくすると、おじいさんのくらしは、ますますくるしくなってきました。たきぎもあまり売れません。
それを見たぶんぶくちゃがまは、おじいさんに言いました。
「ねえおじいさん、見せもの小屋にいって、ぼくをつかってお金をかせいでみない?」
「見せもの? どうやって?」
「ぼくがつなわたりをするんだ。ちゃがまがつなわたりなんて、だれも見たことないだろう?」
おじいさんはびっくりしましたが、ぶんぶくちゃがまのいうとおりに、街へ行って、見せもののじゅんびをしました。
そして、いよいよ本ばん。たぬきのすがたになったぶんぶくちゃがまが、ながーいつなの上を、よいしょよいしょと歩きました。ちゃがまのかたちのまま、しっぽでバランスをとって、見事につなわたりを成功させたのです!
人びとはおおよろこびで、大きなはくしゅをおくりました。
「こりゃすごい! こんなちゃがま、見たことない!」
「なんてかわいいたぬき!」
人びとはつぎつぎにお金をおいていき、おじいさんはどんどんお金持ちになりました。
それからというもの、ぶんぶくちゃがまとおじいさんは、街から街へと旅をしながら、見せものをつづけました。ぶんぶくちゃがまは人気者になり、おじいさんも、もうびんぼうではなくなりました。
そして、年をとったおじいさんとぶんぶくちゃがまは、街のはずれの小さな家で、のんびりとすごすようになりました。
お茶をわかすときには、ぶんぶくちゃがまが本来のちゃがまのすがたにもどって、おいしいお茶をいれてくれました。
ちゃがまから立ちのぼる湯気とともに、おじいさんとぶんぶくちゃがまは、いつまでもしあわせにくらしましたとさ。
おしまい。
詳細情報
- ページタイトル
- 文福茶釜(ぶんぶくちゃがま)-日本
シェア