証誠寺の狸囃子
昔々、東京のはしっこにある山の中に、「しょうじょうじ」という小さなお寺がありました。
このお寺のまわりには、大きな竹やぶと、ふかい森がひろがっていて、日が暮れると、風にゆれる竹の音や、フクロウの声が、こわいくらいに響いてきました。
けれど、ここにはひとつ、ふしぎなうわさがありました。
「しょうじょうじには、たぬきが出るらしいぞ。しかも、夜になると、おなかをぽんぽこたたいて、おはやしをするんだと!」
そんなうわさを聞いて、おとなたちはちょっぴりこわがっていました。でも、こどもたちはワクワクして、しょうじょうじのたぬきばやしを一目見てみたいと、うずうずしていました。
ある秋の夜、月がまんまるにのぼった晩のこと。
風もなく、空気がしんと静まりかえったころ、しょうじょうじの森の中から、かすかに――
「ぽん、ぽこぽこ、ぽん♪」
という音が聞こえてきました。
「おや? これは……たぬきのおはやしかな?」
音はだんだん大きくなって、
「ぽんぽこ ぽんの ぽんぽこな♪
たぬきが おなかを ぽんぽこな♪」
というふしぎな歌声まで聞こえてきました。
おそるおそる、森のそばまで来てみると――
なんと、しょうじょうじのやしきの前のひろばで、たくさんのたぬきたちが、まんまるの月に照らされながら、おなかをぽんぽこたたいて、おどっているではありませんか!
「ほいさっさー!」「それそれ!」
大きなたぬ肝、小さなたぬ肝、ぴょんぴょんはねたり、くるりとまわったり。
「ぽんぽこ ぽんの ぽんぽこな♪」
まるでおまつりのように、たぬきたちは楽しそうに、おどりつづけています。
そのなかには、おじいさんたぬ肝、おばあさんたぬ肝、赤ちゃんたぬ肝いて、みんなでにこにこ笑っているのです。
「これが……しょうじょうじのたぬきばやし!」
木のかげからそっと見ていた子どもたちは、目をまんまるにして、声をひそめながらも、心の中で大はしゃぎ。
たぬきたちのはやしは、月がしずかに西の空に沈むまで、ずっとずっとつづきました。
そして夜があけるころ、たぬきたちはふっと姿を消してしまいました。
それからというもの、しょうじょうじのたぬきばやしは、ふしぎなおはなしとして、村の子どもたちのあいだで語りつがれました。
今でも、しょうじょうじの近くでは、まんまるお月さまの夜に耳をすますと――
「ぽんぽこ ぽんの ぽんぽこな♪」
という音が、どこからともなく聞こえてくるのだとか。
たぬきたちは、きっと今も、だれにも見つからないように、おなかをぽんぽこたたいて、おどっているのかもしれませんね。
おしまい。
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- 証誠寺の狸囃子(しょうじょうじのたぬきばやし)-日本
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