「オカルトと太陽の戦い」(Oqaluk and the Battle of the Sun)-グリーンランド
昔々、北の果ての氷の大地に、「オカルト」という名の若者が住んでいました。オカルトは小柄ながら聡明で、だれよりも空や風、星の動きを読み取るのが上手でした。しかし、彼の村では何年もの間、冬が終わらず、太陽が姿を見せないまま、永遠に夜が続いていたのです。
作物も育たず、動物も減り、人々は希望を失いかけていました。老人たちは「これは太陽が闇の魔王ナルグルにさらわれたせいだ」と語りました。
「太陽が闇の穴に閉じ込められている。それを救えるのは、“光の言葉”を知る者だけじゃ」
その夜、オカルトは夢を見ました。夢の中で、太陽が小さな子どものような姿で泣いていました。
「オカルト、たすけて… 闇の中はさむいよ…」
目覚めたオカルトは決意しました。「ぼくが太陽を取り戻す!」と。彼は風と話すため、山の頂へ登りました。吹雪の中、オカルトは大声で呼びかけました。
「北風よ、教えて! 太陽はどこにいる?」
すると北風はうなり声をあげながら答えました。
「闇の穴へと連れていかれた… そこに行くには、“影の門”を通らねばならぬ。だが、戻ってきた者はいない…」
それでもオカルトは迷いませんでした。氷の杖と、祖父から譲り受けた**光の紐(ヌーナク)**を持って、旅に出ました。
数日の旅の末、オカルトはついに“影の門”にたどり着きました。それは黒い氷でできた巨大なアーチで、そこをくぐると、世界がすべて灰色になりました。星も風も、声を失ったように静まり返っています。
奥へと進むと、現れたのは、闇の魔王ナルグル。全身が黒煙でできたような巨人で、目だけが燃えるように赤く光っていました。
「よく来たな、小さき者よ。太陽を返してほしいのか?」
オカルトは震える声で言いました。「太陽は皆のものだ。あなたのものではない!」
「では、戦うか? わたしの闇と、おまえの光で!」
ナルグルが腕を振るうと、暗黒の波が襲いかかってきました。オカルトはとっさに光の紐を掲げ、それを天へ投げました。すると紐は大きな光の輪となって空に広がり、ナルグルの闇を押し返しました。
「光は奪えない! 心の中にある限り、燃え続ける!」
そう叫んだオカルトの胸から、まばゆい光があふれ出し、それが闇の穴全体を照らしました。ナルグルは叫びながら霧のように溶け、太陽が金色の球として空高く昇っていきました。
オカルトは気を失い、その場に倒れました。
。
彼が目を覚ましたとき、そこには太陽の暖かな光が差し込んでいました。雪は溶け、鳥の声が聞こえました。オカルトは無事に村に戻り、人々は涙を流して彼を迎えました。
その日から、グリーンランドの人々は冬の終わりに太陽の帰還を祝う儀式を行うようになりました。そして今でも、冬が長引いた年にはこう言われています。
「オカルトのような心を、忘れてはいけない」
おしまい。
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