「カラールクとクヴァル」(Kallak and Kval)-グリーンランド
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昔々、グリーンランドのとても寒い北の海辺に、カラールクという若い狩人が住んでいました。カラールクはひとりきりで、家族もいませんでした。彼の友達は、空を飛ぶカモメと、氷の下を泳ぐアザラシだけ。でも、彼は毎日、静かに狩りをしながら自然とともに生きていました。
ある日、カラールクは氷の上に開いた穴から海をのぞき込み、大きなクジラの目と目が合いました。そのクジラはとても古く、背中には氷のような模様があり、まるで海の王のような存在でした。
「お前がカラールクか」と、クジラは人の言葉で語りかけてきました。
驚いたカラールクは黙ったまま頷きました。
「わたしの名はクヴァル。この海の記憶を持つものだ。お前には心がある。だから、あることを教えよう。」
クヴァルは、カラールクに言いました。
「海はお前たち人間が思うよりずっと生きている。そして、命をいただくには、それに見合う心が必要だ。欲望で動けば、海はすぐにそれを知るだろう。」
カラールクはその言葉の意味がよくわかりませんでした。でもその夜、彼は夢を見ました。クヴァルが、狩りすぎた人間の村を通り過ぎ、沈んでいく夢。海が怒って、村を飲みこんでしまうのです。
翌朝、カラールクは自分の心に問いかけました。「わたしは、必要なだけをとっているだろうか?」
それからのカラールクは、狩りをするとき、まず空を見上げて風を読み、海に向かって小さくつぶやくようになりました。
「今日も少し、分けてください。」
その心を感じ取ったのか、アザラシも魚も、自然の流れの中で彼のもとに現れるようになりました。欲張らず、必要な分だけをとることで、彼の生活は不思議と安定していったのです。
数年がたち、再びクヴァルが氷の下から現れました。
「お前の心は変わった。だからこそ、わたしはお前に海の秘密を一つ教えよう。」
クヴァルは、海底に眠る「光る岩」の場所を教えました。その岩は、村を暖かく照らす灯りになり、氷の夜に希望をもたらすものでした。
カラールクはその光る岩を村の人々に分け与え、氷の冬の間、皆が暖かく過ごせるようにしました。彼は欲しがらず、ただ「海の恵み」として皆と分け合いました。
やがて彼は年老い、海辺の小屋で静かに暮らしました。そして最後の日、クヴァルが静かにやってきて言いました。
「お前のような者がいたことを、わたしは海に語り継ごう。」
その夜、カラールクの魂は海の風となり、今もクヴァルとともに北の海を旅していると言われています。
おしまい。
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