「ジャック・オー・ランタンの伝説」(Jack O'Lantern)-アイルランド
むかしむかし、アイルランドという国に、
「ずるがしこいジャック」という男がいました。
ジャックは、働くのがきらいで、いつも酒場でお酒ばかり。
けれど頭の回転だけははやく、うそをついては人をだましていました。
そんなある晩のこと。
ハロウィンの夜、霧のたちこめる道を、ジャックがふらふら歩いていると、
道の向こうから黒い影がやってきました。
「こんばんは、ジャック。おまえの命をもらいにきたぞ。」
それは――なんと悪魔でした!
ジャックはおどろきましたが、
すぐにニヤリと笑って言いました。
「悪魔さん、最後にお酒を一杯だけ飲ませてくれませんか?
でも、財布にはお金がないんですよ。」
悪魔はしばらく考えてから、
「ふん、しかたない。わたしが銀貨に化けてやろう。
それで酒を買うがいい。」
と言って、自分の体を銀貨に変えました。
すると、ジャックはその銀貨をひょいとつかみ、
ポケットの中の銀の十字架といっしょにしまいこんだのです。
「これで、悪魔は動けまい!」
十字架の力で、悪魔はたちまち小さくなり、
ポケットの中でジタバタするだけ。
「おい、出してくれ! 二度とおまえを取りに来ないから!」
悪魔はあわてて約束しました。
ジャックはニヤリと笑い、
「じゃあ約束を守れよ。」と言って銀貨を放しました。
──そして1年がたちました。
またハロウィンの夜。
悪魔は約束を忘れず、ふたたび現れました。
「今度こそ、おまえの命をもらうぞ、ジャック!」
するとジャックはまたもや笑って言いました。
「いいだろう。でも最後に、木の上のリンゴをひとつ食べたいんだ。」
悪魔はしぶしぶ木にのぼり、リンゴを取ろうとしました。
そのすきにジャックは木の幹に十字架の印を刻みました。
たちまち悪魔は動けなくなり、木の上でわめきます。
「おい! おろしてくれ!」
ジャックは言いました。
「じゃあ約束しろ。二度とわたしの魂を地獄へ連れていかないと!」
悪魔はしかたなくうなずきました。
そしてジャックは、またもや助かりました。
──ところが、それからしばらくしてジャックは死んでしまいました。
天国の門の前まで行くと、神さまが言いました。
「おまえはうそをつき、人をだました。天国へは入れぬ。」
しかたなく、ジャックは地獄の門へ行きました。
けれど悪魔はにやりと笑って言いました。
「約束をしただろう? おまえを地獄にも入れない。」
ジャックは行くところをなくし、
暗い夜の道をひとりぼっちで歩くしかありませんでした。
「せめて道を照らす火をくれ……。」
そう言うと、悪魔は小さな炎をひとつ投げてよこしました。
ジャックは道ばたに落ちていたカブをくりぬき、
その中に火を入れました。
こうして――
ジャックは、ランタンを手に夜の闇をさまようことになったのです。
それが「ジャック・オー・ランタン」。
今もハロウィンの夜になると、
カボチャのあかりをともして歩くのは、
あのずるがしこいジャックの魂をしずめるためなのだといわれています。
おしまい。
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