「ジャムの魔法」(Magic of Jam)-イギリス
他言語版
昔々、イギリスの小さな村に、エミリーという心優しい女の子が住んでいました。
エミリーの家はあまり裕福ではありませんでしたが、彼女はいつもお母さんと一緒に、おいしいジャムを作って暮らしていました。
エミリーの家の庭には、大きな木があり、毎年たくさんのベリーが実りました。
そのベリーを使って作るジャムは、村の誰もが「こんなにおいしいジャムはほかにない!
」と言うほどでした。
ある日、エミリーが森でベリーを摘んでいると、不思議なおばあさんに出会いました。
おばあさんは古びた杖を持ち、やさしく微笑んでいました。
「エミリー、いつも村のみんなに優しくしているね。
そのお礼に、特別なものをあげよう。
」
そう言って、おばあさんは小さな銀色のスプーンをエミリーに手渡しました。
「このスプーンでジャムをかき混ぜると、食べた人が幸せになる魔法がかかるんじゃよ。
」
エミリーはびっくりしましたが、お礼を言って家に帰りました。
そして、さっそくスプーンを使ってジャムを作ってみました。
すると、ジャムの甘い香りが部屋いっぱいに広がり、いつもよりずっと美味しそうに見えました。
次の日、エミリーはそのジャムを瓶につめ、村のいちばへ持っていきました。
最初にジャムを買ったのは、いつも不機嫌そうなパン屋のおじさんでした。
おじさんがひとくち食べると、顔がぱっと明るくなり、にっこり笑いました。
「こんなにおいしいジャムは初めてだ!
なんだかとても幸せな気持ちになるよ!
」
それからというもの、エミリーのジャムは村じゅうで評判になりました。
ジャムを食べた人はみんな笑顔になり、普段けんかばかりしている兄弟も仲良くなり、元気のなかったおばあさんも若いころのように明るくなりました。
エミリーは嬉しくて、毎日ジャムを作り続けました。
でも、ある日、村の意地悪な商人がエミリーの家にやってきました。
「お前のジャムを全部買い取ろう。
そして、このスプーンもよこしな!
」
エミリーは「これはおばあさんにもらった大切なものだから、売れません」と断りました。
すると、商人はこっそりスプーンを盗んでしまいました。
そして、自分の店でジャムを作り、高い値段で売り始めました。
しかし、商人の作ったジャムを食べても、誰も幸せになりませんでした。
それどころか、商人自身がジャムをひとくち食べた途端、口の中が苦くなり、驚いてスプーンを落としてしまいました。
すると、スプーンはぱっと光って、エミリーの家へ飛んで帰っていきました。
エミリーはスプーンをしっかり握りしめ、「これからも、優しい気持ちをこめてジャムを作ろう」と決心しました。
それからも彼女のジャムは村のみんなを幸せにし、村はますますにぎやかになりました。
そしてエミリーは、おばあさんの言葉を思い出しました。
「本当の魔法は、スプーンではなく、君の優しい心なのじゃよ。
」
おしまい。
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