「トリック・オア・トリートのはじまり」(The Beginning of Trick or Treat)-アメリカ
むかしむかし、アメリカの小さな町に、
エミリーという女の子がいました。
秋が深まるころ、町じゅうの木々が赤や黄色に色づき、
風がヒュウと吹くと、落ち葉がカサカサ踊ります。
けれどその年の秋は、ちょっと特別でした。
町の人たちはみんな貧しく、
お菓子もごちそうもほとんどありません。
それでも、エミリーは言いました。
「ハロウィンの日は、笑顔で過ごしたいわ。
どんなに貧しくても、楽しい夜にしたいの。」
エミリーは考えました。
そして古い布をつぎはぎして魔女のマントを作り、
近所の子どもたちにも声をかけました。
「ねえ、みんな! おばけの格好をして歩こうよ!
『おかしをくれなきゃ、いたずらしちゃうぞ!』って言いながら!」
子どもたちは大笑いしました。
「そんなこと言ったら、大人たちがびっくりしちゃうよ!」
「でも、楽しそう!」
ハロウィンの夜――
子どもたちは手作りの仮装をして、
ランタンをかかげ、町を歩きました。
「トリック・オア・トリート!(おかしをくれなきゃ、いたずらするぞ!)」
最初の家では、おじいさんが出てきて笑いました。
「おやおや、いたずらっ子たちめ!
おかしはないけど、このりんごを持っておいき。」
次の家では、おばあさんがカゴいっぱいのクッキーをくれました。
「かわいいおばけさんたちにごちそうしなくちゃね。」
そうして子どもたちは、家々をまわりながら
笑い声とともに夜の通りをにぎやかにしました。
やがて町じゅうに明かりがともり、
貧しかった人たちの家にも笑顔が広がりました。
その夜、エミリーは家に帰って言いました。
「おかしをもらえてうれしかったけど、
いちばんうれしいのは、みんなが笑っていたことだわ。」
母さんはやさしくうなずきました。
「そうね、エミリー。
お菓子は、みんなの心をわけあうための魔法なのよ。」
それから何年たっても、
町の子どもたちはハロウィンの夜になると
仮装をしてこう言うのです。
「トリック・オア・トリート!」
そして、それがアメリカじゅうに広まり、
いまでは世界中の子どもたちが、
この魔法の言葉で笑顔になるようになったのです。
おしまい。
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