「ヤモリと月の精霊」(The Gecko and the Moon Spirit)-ニューカレドニア
昔々、南の海に浮かぶ島、ニューカレドニアの森の奥に、小さなヤモリが住んでいました。
ヤモリの名前はティモ。
ティモは夜になると木の上に登り、空を見上げるのが大好きでした。
「月はどうして、あんなに美しいんだろう?
」
ティモはいつも月に向かって話しかけました。
するとある夜、月がキラキラと輝きながら、やさしい声で答えました。
「ティモよ、私は月の精霊。
夜の世界を照らし、みんなを見守っているのよ。
」
ティモはびっくりしましたが、うれしくなりました。
「月の精霊さま、ぼくもあなたのように輝くことができる?
」
月の精霊はそっと笑いました。
「それは難しいことだけれど、もし本当に願うのなら、試してごらんなさい。
」
ティモは考えました。
どうすれば月のように光れるだろう?
夜の間じゅう、川の水に映る月の光をすくおうとしたり、森の中の光る虫を集めたりしました。
でも、どんなにがんばっても、月のようにはなれませんでした。
「やっぱり無理なのかな。。
」ティモはがっかりして、木の上で丸くなりました。
すると月の精霊が、やさしくささやきました。
「ティモ、あなたはもう輝いているのよ。
」
「えっ?
」ティモは驚きました。
「ぼくは光ってなんかいないよ。
」
「あなたが夜になると元気に動き回る姿は、まるで星がきらめくよう。
あなたの鳴き声は、夜の静けさの中で響いて、みんなの心を安心させるの。
輝くというのは、光ることだけじゃないのよ。
」
ティモは目をぱちくりさせました。
「そうか。ぼくにもできることがあるんだ!
」
それからティモは、毎晩元気に森を駆け回り、やさしく鳴き続けました。
すると、森のみんながティモの声を聞いて安心するようになりました。
「ティモの声が聞こえると、夜がこわくなくなるよ。
」と、小さな鳥が言いました。
「ティモは夜の見張り番だね。
」と、フクロウがほめました。
ティモはもう、月のように光りたいとは思いませんでした。
なぜなら、自分にもできることがあると知ったからです。
その夜もティモは木の上で、にっこりと笑いながら月を見上げました。
「ありがとう、月の精霊さま。
」
月の精霊はやさしくほほえみ、夜空に静かに光り続けていました。
おしまい。
シェア