Onedollar Wanderer

「塩の値段」(O soli cenniejszej niż złoto)-ポーランド

塩の値段はポーランドの物語です。

むかしむかし、ポーランドのとある国に、

とてもりっぱで、けれど少しうぬぼれた王さまがいました。

王さまには三人の娘がいました。

長女のクララ、次女のエルジュビェタ、そして末のマリヤ。

三人とも美しく、王さまをとても慕っていました。

ある日、王さまは三人を玉座の前に呼び出しました。

「わしをどれほど愛しておるか、言ってみなさい。

いちばんわしを愛している娘には、国の半分をゆずろう!」

長女クララが前に進み出て言いました。

「お父さま、私はあなたを金よりも宝石よりも愛しています!」

王さまは満足そうにうなずきます。

次女エルジュビェタは言いました。

「お父さま、私はあなたを絹よりも銀よりも愛しています!」

王さまはさらにごきげんになりました。

最後に末のマリヤが、静かにこう言いました。

「お父さま、私は……塩よりもあなたを愛しています。」

「塩?」

王さまはびっくりして、顔をしかめました。

「塩など、どこの台所にもある。

それをわしより上に置くとは! なんと馬鹿げた娘だ!」

王さまは怒り、マリヤを城から追い出してしまいました。

姉たちは止めようとしましたが、王さまの耳には届きません。

マリヤは涙をぬぐい、

「お父さま、いつか塩の大切さをわかってくださるでしょう」と言い残して城を出ました。

それからマリヤは、森をさまよい歩きました。

やがて心やさしい若者に出会い、彼の家族に助けられました。

彼らは小さな農家でしたが、マリヤはよく働き、皆に愛されました。

やがてその若者と結ばれ、幸せに暮らすようになりました。

さて、一方の王さま。

マリヤを追放した後も、長女と次女とともに贅沢な暮らしをしていました。

しかしある夜、ひとりの魔法使いが王の夢に現れました。

「あなたは真実を知らねばならない。

明日から、あなたの国の塩はすべて消える。」

翌朝、王が目を覚ますと――

国じゅうの塩倉庫が空っぽでした。

海からも、岩山からも塩がとれません。

料理人が言いました。

「陛下、今日のスープには塩がございません。」

王さまは「それくらい大したことではない」と笑いました。

ところが、一口スープを飲むと、

「うっ……まずい! 味がまるでせぬ!」

肉もパンも、どんなごちそうも、味が抜けたようでした。

塩がないと、肉はすぐに腐り、

人々は病気になり、動物も弱っていきました。

国中が悲鳴をあげました。

そのとき、ある村から知らせが入りました。

「陛下、マリヤ姫が、塩を持っているそうです!」

王さまは驚き、急いで馬に乗り、マリヤの住む村へ向かいました。

そこではマリヤが、

人々に塩を分け与えながら、笑顔で暮らしていました。

王さまはひざまずき、涙を流しました。

「マリヤよ……わしが間違っていた。

お前の言葉が本当だったのだ。塩は宝石よりも貴い。」

マリヤはやさしくほほえみました。

「お父さま、私の愛はこの塩のように、

見えなくても、なくてはならないものなのです。」

その言葉を聞いて、王さまは娘を抱きしめました。

そして国に戻り、塩を大切にし、

人々に「どんな小さなものにも、真の価値がある」と教えました。

その日から、王さまは塩を「王の宝」と呼び、

マリヤに王冠をゆずったといいます。

――だから今でも、ポーランドでは言うのです。

「塩のない食卓は、愛のない家と同じだ」と。

おしまい。