「妖精の夜の訪問」(The Fairy Riders on Samhain Night)-スコットランド
むかしむかし、スコットランドの山あいに、
メアリという女の子が住んでいました。
家は小さくて、屋根には苔が生え、
まどからは風がスースー入ってくるほど。
それでもメアリは、母さんとふたりで仲よく暮らしていました。
秋も深まり、森の葉っぱが金色に光るころ、
村ではサウィン(ハロウィン)の夜のしたくがはじまります。
「火を絶やすと妖精が家に入るぞ」
と村人たちは言って、炉に火をくべ、窓をしっかり閉めました。
けれどメアリの家では、薪(まき)が足りません。
母さんはため息をつきました。
「明日はもっと冷えこむねえ……。」
メアリは夜更けに目を覚まし、
そっと外の風の音を聞いていました。
そのとき――
ヒュウウウウ……と風がふきぬけ、
森の奥からかすかな鈴の音がしました。
チリン、チリン……
メアリが戸口からのぞくと、
月の光に照らされて、
白い馬に乗った小さな影たちが走ってくるではありませんか!
それは、妖精の騎士(フェアリー・ライダー)たちでした。
金色のたてがみをもつ馬、
星のように光る衣をまとった妖精たちが、
夜の野原を駆けぬけていきます。
「わあ……なんてきれい……」
メアリが思わずため息をつくと、
ひとりの妖精がふり向き、微笑みました。
「人間の子よ、寒くはないか?」
「ええ、少しだけ……。薪がもうないの。」
妖精の目は月のように青く光り、
その子は馬からおりて、メアリに小さな袋を手わたしました。
「これを家の炉に入れなさい。
けれど、夜が明けるまで、のぞいてはいけないよ。」
メアリはうなずいて袋を受け取り、家に戻りました。
そして母さんの眠る横で、袋をそっと炉に置きました。
夜のあいだじゅう、袋の中からポウッとあたたかな光がもれて、
部屋をやさしく照らしました。
朝になって目を覚ますと――
なんということでしょう!
袋の中には金色のどんぐりがたくさん入っていました。
母さんはびっくりして言いました。
「なんてこと……! これで冬を越せるよ!」
メアリはにっこり笑って、
夜に見た妖精たちのことを話しました。
その日から、家には不思議と風が入らず、
炉の火も絶えることはありませんでした。
そして村では今でも言い伝えられています。
「サウィンの夜に妖精に出会ったら、
こわがらずにやさしくしてごらん。
きっと小さな幸せを運んでくれる。」
おしまい。
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