「幽霊の船」(The Flying Dutchman) - オランダ
昔々、オランダの海を行く大きな帆船がありました。
その船の名前は「フライング・ダッチマン」。
何百年も前、船の船長であるダニエル・ヴァン・デル・デンが、嵐の中で命をかけて船を守る決意をしました。
しかし、その決意が悲劇を生みました。
ある日、ヴァン・デル・デン船長は、激しい嵐に見舞われている中、航海を続けるよう命じました。
船員たちは恐れを感じ、嵐の中での航海が無謀だと感じましたが、船長は言いました。
「この嵐を乗り越えれば、我々の船は伝説となり、海を支配するだろう。
」
嵐はますます激しくなり、船は次第に制御を失いました。
しかし、ヴァン・デル・デン船長はあきらめることなく、命を懸けて船を進め続けました。
船は波を越え、風を切り裂き、まるで不死のように進んでいきました。
船員たちは恐怖におののきましたが、船長はただ前を見据えていました。
その時、突然、天から雷が落ち、船は大きな爆音とともに消えました。
ヴァン・デル・デン船長とその船員たちは、その瞬間、永遠に海に囚われてしまったのです。
それ以来、フライング・ダッチマン号は、どんな嵐の日でも海を漂い続け、決して港に帰ることがありませんでした。
その船は霧の中に現れ、夜の海を照らす青白い光を放ちながら、無限に航海を続けています。
見た者は誰もが、その幽霊船を目撃したと語りますが、その船に近づいた者は二度と戻ってきませんでした。
ある晩、若い漁師が海を渡っていました。
夜の海は静まり返り、月明かりだけが海面を照らしていました。
その時、漁師の目の前に突然、青白く光る船が現れました。
船の帆はぼろぼろで、船員たちの顔は見えません。
しかし、その船の船首には、ヴァン・デル・デン船長らしき人物が立っていました。
漁師は恐怖にかられましたが、船長の姿をじっと見つめると、船長は静かに語りかけました。
「お前は、なぜここに来たのだ?
」
漁師は震えながら答えました。
「私は、ただ漁をしていただけです。
あなたは何者ですか?
」
船長は長い沈黙の後、ゆっくりと言いました。
「私はフライング・ダッチマンの船長だ。
永遠に帰れないこの船で、ただ海を漂い続けるのだ。
」
その言葉を聞いた漁師は、ふと心が沈み込みました。
そして、船長に向かってこう言いました。
「それならば、船長様。
あなたに、永遠の眠りを与えるために、私をその船に乗せてください。
私があなたと一緒に海を渡ることで、あなたの苦しみが終わることを願います。
」
船長はしばらく黙っていましたが、やがてうなずきました。
「お前の思い、ありがたく受け取る。
だが、約束を果たしたその日、私たちの呪いは解けるだろう。
」
その後、漁師は船に乗り込み、フライング・ダッチマン号とともに海を進みました。
船は不思議な静けさに包まれ、永遠に続く航海を続けたと言われています。
そして、誰もその船がどこで終わったのか、何百年も経っても分かっていません。
今でも、嵐の夜に海を渡ると、漁師たちは青白く光るその船を見かけることがあります。
その船は、永遠に航海を続け、船長はその呪いを解く日を待ち続けているのです。
おしまい。
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