「悪魔と金の鏡」(The Devil and the Golden Mirror)- フランス
昔々、フランスの小さな村にジャンという若者が住んでいました。
ジャンは村一番の腕の良い職人で、彼の作る木製の家具はどれも美しく、村人たちにとても愛されていました。
しかし、ジャンには一つ大きな悩みがありました。
それは、彼がどんなに努力しても、豊かさを手に入れることができなかったことです。
ジャンはいつも言っていました。
「もしお金があれば、もっと多くの人を幸せにできるのに。
」彼は心から、人びとのために素晴らしい作品を作りたかったのです。
しかし、彼の夢はお金の壁にぶつかり、いつも限られた材料と時間の中で悩んでいました。
ある晩、彼が工房で黙々と作業をしていると、突然扉がノックされました。
開けてみると、そこに立っていたのは、奇妙な男でした。
男は長い黒いコートを羽織り、赤く輝く目をしていました。
「お前がジャンか?
」男は低い声で尋ねました。
「はい、私はジャンです。
何かご用でしょうか?
」ジャンは少し警戒しながら答えました。
男はにやりと笑い、「私は悪魔、ルシファーだ。
お前の願いを叶えてやる代わりに、少しの代償をもらう。
」と言いました。
ジャンは驚きましたが、悪魔の言葉には不思議な魅力があり、つい耳を傾けました。
「お前が求めるものは金か?
それとも名誉か?
お前の工房を一瞬で満たす金を、私は与えよう。
ただし、1つの条件がある。
」悪魔は続けました。
ジャンは思わず答えました。
「金が欲しいです。
でも、どんな条件でも構いません。
私はどうしても、もっと多くの人びとを助けたい。
」
「その心意気が気に入った。
」悪魔はにやりと笑いました。
「では、この金の鏡を持って行け。
」悪魔は手のひらに金色の鏡を出しました。
それは、まるで太陽のように輝き、見る者の目を引きました。
「この鏡を使えば、お前の望むものがすぐに手に入る。
しかし、その代償として、この鏡が示す『真実』を受け入れなければならない。
」
ジャンはその言葉を深く考える間もなく、鏡を受け取りました。
「わかりました。
私はこの鏡を使って、村の人びとに幸せをもたらすつもりです。
」
悪魔は満足そうに笑い、「忘れるな、鏡の真実を受け入れれば、お前の願いは叶う。
」そう言うと、静かに消えていきました。
ジャンは次の日、鏡を使って工房に向かいました。
鏡に向かって一言「金を」と呟くと、鏡は強い光を放ち、瞬く間に金貨が山のように積み上がりました。
ジャンはその光景に驚きましたが、それと同時に喜びが込み上げてきました。
村人たちもその変化に気づき、ジャンの工房に訪れてきました。
ジャンはお金を使って素晴らしい家具を作り、村人たちに分け与えました。
人びとは喜び、ジャンもその成功を享受しました。
しかし、次第にジャンは鏡の力に依存するようになり、次第に心が冷たくなっていきました。
ある日、ジャンは再び鏡を覗き込みました。
今度はもっと多くの金を求めて呟きました。
「もっと、もっと金を。
」
すると、鏡は答えました。
「その金は、お前の心をさらに深く埋めていく。
お前の欲望が満たされることはない。
」
その瞬間、ジャンは自分の変わり果てた姿に気づきました。
かつての善良な心は失われ、代わりに冷徹で欲深い心が生まれていたのです。
村の人びとは彼から遠ざかり、彼の元には誰も訪れなくなりました。
ジャンはついに悪魔に与えられた鏡を手放す決意をしました。
鏡を山の中に捨て、再び貧しくても人びとと共に生きる決心をしたのです。
その後、ジャンは貧しいままでしたが、心は豊かになり、村人たちと共に過ごす日々を大切にしました。
彼は決して金や物に惑わされることなく、人びとのために尽力し続けました。
最終的に、ジャンは村で最も尊敬される人物となり、彼の誠実な心が人びとを幸せにしたのでした。
おしまい。
シェア