「正直な商人と嫉妬深い兄弟」(تاجر الأمين وإخوته الحاسدون)-アラブ
むかしむかし、砂漠の国に三人の兄弟がいました。
長男はハッサン、次男はサリーム、そして末の弟がアミーンといいます。
アミーンという名前は「正直者」という意味。
その名のとおり、彼はいつもまじめで、嘘をつかず、人を助けるのが大好きでした。
三人は父のあとをついで、香料や絹を売る商人になりました。
父の言葉はこうでした。
「アッラーの御心を信じ、正しい取引をしなさい。
お金よりも信頼のほうが、はるかに価値があるのだ。」
けれど兄たちは違いました。
ハッサンとサリームは欲深く、
「どうすれば一番もうかるか」ばかりを考えていました。
アミーンが人に親切にしているのを見ると、
「そんなことをしても金にはならない」と鼻で笑いました。
ある日、三人は遠い町へ商いに出かけました。
灼けるような太陽の下、らくだの列が砂丘を越えて進みます。
途中で彼らは貧しい旅人に出会いました。
旅人は喉が渇き、倒れかけています。
アミーンはすぐに自分の水袋を差し出しました。
「どうぞ、あなたのいのちのほうが大切です。」
兄たちは怒りました。
「そんな無駄なことを! その水は金になるんだぞ!」
けれど旅人は涙を流して感謝し、
「あなたの正直な心に、アッラーの祝福がありますように」と言い残して去っていきました。
やがて三人は大きな都につき、商いをはじめました。
アミーンの店には、なぜか次々と客が訪れました。
値段を正しく告げ、品物をごまかさないその誠実さが評判になったのです。
一方、兄たちはうそをつき、金に目がくらんでいました。
思うようにもうからず、やがて人々にそっぽを向かれました。
そんなある晩、兄たちは相談しました。
「弟ばかりが名を上げるのが気にくわん。
どうにかしてアミーンを追い出そう。」
次の日、兄たちはこっそり弟の荷に、金貨の袋を忍ばせました。
そして役人の前に出て、
「この弟がわたしたちの金を盗みました!」と叫びました。
アミーンは驚きました。
「そんなこと、するはずがありません!」
けれど袋は彼の荷から見つかり、まわりの人々も信じてくれません。
アミーンは町を追われ、砂漠にひとり残されました。
夜の砂漠は冷たく、星がきらめいていました。
アミーンは小さく祈りました。
「アッラーよ、わたしは正直であろうとしただけです。
どうか兄たちをおゆるしください。」
そのとき、遠くからあの旅人がやってきました。
実はその旅人は、王さまが人々の心をためすために旅していた姿だったのです。
王さまはアミーンを都へ連れ帰り、話を聞きました。
やがて兄たちの嘘はすべて明らかになり、
王さまはアミーンに言いました。
「おまえの正直さとやさしさこそ、真の宝だ。
わたしの商館をまかせよう。」
アミーンは感謝し、兄たちを恨むことなくこう言いました。
「兄たちは一時の迷いにおちただけです。
許してあげてください。」
その寛大さに、王さまも人々も深く心を打たれました。
こうしてアミーンは王の商人として町の人々に信頼され、
国じゅうに「正直な商人」として知られるようになりました。
兄たちも、弟の寛大さに涙を流し、
「正直さこそ、何よりも価値がある」と心から悟ったのです。
それからというもの、
この国では、正直な取引をする人の店の前に、
風がやさしく金の香を運ぶといわれています。
――アッラーは正直な者を愛し、
嘘をつく者を遠ざける。
それがこの物語の教えです。
おしまい。
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