「湖の魔女と勇敢な漁師」(The Lake Witch and the Brave Fisherman)-フィンランド
他言語版
昔々、フィンランドの深い森に囲まれた静かな湖がありました。
その湖には、誰も近づこうとはしない不気味な伝説がありました。
湖の底には魔女が住んでいて、彼女は夜な夜な湖面に現れ、漁師たちを怖がらせていたのです。
魔女は一度湖の水面に出ると、魚を逃してしまうばかりか、漁師の舟をひっくり返すことさえありました。
そのため、村の人々はその湖を恐れ、誰も漁に出ようとしませんでした。
しかし、ある日、若い漁師のユハンが村に帰ってきました。
彼は他の漁師たちとは違い、魔女の伝説を信じていませんでした。
彼は祖父から聞いた話を思い出し、湖の秘密を自分の目で確かめる決心をしました。
ユハンは一晩中漁に出て、魔女が本当に存在するのか、確かめるつもりだったのです。
夜が更け、湖の水面は静まり返り、月明かりがその上に優しく照らしていました。
ユハンは舟を漕ぎながら湖の中心へと進んでいきました。
しばらくして、湖の底から何かが浮かび上がり、目の前に現れたのは、長い黒髪を持ち、顔に冷たい笑みを浮かべた美しい女性でした。
その女性こそ、村で語り継がれていた湖の魔女だったのです。
魔女はユハンに向かって言いました。
「勇敢な若者よ、私の魔力を恐れず、ここまで来たのか。
だが、あなたの命は私のものだ」と、冷ややかな声で言いました。
ユハンは少しも動じることなく、魔女を見つめ返しました。
「命を取られたくなければ、何か試練を与えるべきだ」とユハンは言いました。
魔女は微笑みながら、ユハンの挑戦を受け入れました。
「では、試練を与えよう。
湖の底には、私が守る宝がある。
その宝を取ってきたなら、あなたの命は助けよう」と、魔女は告げました。
ユハンは一瞬ためらったものの、決して引き下がることなく、魔女の言葉を受け入れました。
彼は湖の底へと潜るため、準備を始めました。
湖の水は冷たく、暗かったが、ユハンは恐れずに深く潜り続けました。
湖の底には、光を放つ美しい宝がありました。
その宝を掴んだ瞬間、湖の魔女の怒りを感じましたが、ユハンは急いでそれを持ち上げ、再び水面に浮かび上がりました。
魔女はその様子を見て、驚きとともに言いました。
「お前は本当に勇敢だな。
だが、約束通りお前の命は助ける。
だが、今後二度と私の湖に近づかぬように」と、魔女は言い残して湖の中へと消えていきました。
ユハンは宝を持って村に帰り、村人たちにその話をしました。
誰もが驚き、恐れていた魔女が実は試練を与えてただけだったことに気づきました。
それからというもの、湖は再び静けさを取り戻し、村の漁師たちは恐れることなく湖で漁をするようになりました。
ユハンはその後も長い間、勇敢な漁師として村で尊敬され、魔女との出会いの話は代々語り継がれることとなりました。
おしまい。
シェア