「火山の涙」(Tears of Volcano)- メキシコ
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昔々、メキシコの山々の中に、トシワという名前の巨大な火山がありました。
トシワはその美しい姿と、周囲の村人たちに与える恵みで知られていました。
周りの土地は豊かで、実る作物も多く、村人たちは火山を大切にし、毎年お祭りを開いて感謝の気持ちを表していました。
けれども、火山には一つの秘密がありました。
それは、トシワの心の中には深い悲しみが眠っているということ。
火山の怒りが頂点に達すると、周囲の村に大きな噴火が起こると言われていたのです。
しかし、誰もその悲しみの理由を知らなかったのです。
ある日、村の近くに住む若者、フアンという少年がトシワの秘密を知ることになりました。
フアンはいつもトシワの美しさに魅了され、時折火山の麓に一人で登ることを楽しみにしていました。
ある晴れた日、フアンはまた火山のふもとに向かって歩きました。
今日は何か特別なことが起きる予感がしていたのです。
ふもとに着くと、フアンはいつもとは違う何かを感じました。
火山の周りに薄い霧が立ち込め、風が静かに吹いていました。
ふと、彼は火山の奥からかすかな声が聞こえることに気付きました。
それは、まるで悲しげな泣き声のようでした。
驚いたフアンは、その声を追って山を登り始めました。
しばらく歩くと、トシワの頂上近くにある神秘的な湖にたどり着きました。
湖は美しい青い色をしていて、まるで天空の鏡のように静かに水面をたたえていました。
しかし、湖の中に何かが輝いているのを見つけたフアンは、近づいてみました。
水面をよく見ると、それはまるで火山の涙のように見える輝く石でした。
フアンはその石を手に取ると、突然、その石から声が響きました。
「私はトシワ。
私は長い間、心の中で涙を流していた。
私の涙は、私の怒りと悲しみから生まれたのだ。
」驚いたフアンは、石を見つめながら尋ねました。
「トシワよ、なぜそんなに悲しいのですか?
」
すると、石はゆっくりと答えました。
「私は大昔、人びとに恵みを与え、力強い山として崇められていた。
しかし、ある時、村人たちが私を敬わず、私の力を恐れ、私を無視した。
私の心は傷つき、涙を流し続けた。
しかし、その涙は私の怒りを鎮めるためのものではなく、私の悲しみを癒すために流れるものだったのだ。
」
フアンはその言葉に心を打たれました。
「でも、トシワよ、あなたの涙は村を守ってきたのです。
あなたが涙を流すことで、村の土地は豊かになり、人びとは実りを得ることができたのです。
」フアンは火山の声に答えました。
「それは、私の願いだ。
」トシワは静かに言いました。
「私の涙が人びとに恵みを与え、彼らが再び私を敬うようになることを願う。
ただ、もう二度と私の涙を恐れないで欲しい。
」
フアンはその言葉を深く胸に刻みました。
彼は火山の涙を再び水面に戻し、山を降りる決心をしました。
そして、村に戻ったフアンは、村の人びとに火山の秘密を伝えました。
村人たちは、トシワの涙が実は悲しみから来ていることを知り、再び火山を敬い、大切にすることを誓いました。
その後、村人たちは毎年、トシワへの感謝の祭りを開き、火山を恐れずに平和に過ごすことができました。
トシワは、もはや怒りではなく、悲しみの涙を流し続けることはなくなり、村に恵みを与え続けました。
村人たちはトシワの心を理解し、その涙がもたらす恩恵に感謝しながら暮らしました。
それからというもの、トシワは怒りを示すことなく静かに眠り続け、村は平和に、そして豊かな土地を保ち続けました。
おしまい。
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