「灰の魔女」(The ashen witch)- フランス
昔々、フランスの深い森の中に、灰の魔女と呼ばれる恐ろしい魔女が住んでいました。
彼女の髪は灰色で、肌も灰色、そして身にまとっているローブも灰色でした。
そのため、彼女は「灰の魔女」と呼ばれていました。
彼女の住む森は、他の村人たちから恐れられ、近づく者はいませんでした。
その魔女はかつて、王国に仕えていたが、ある日突如として王国を去り、森の中で一人孤独に暮らすようになったのです。
何年も人びととは関わりを持たず、彼女の名前さえも忘れられ、ただ「灰の魔女」として伝説だけが残っていました。
ある日、村に住む若い娘、エリゼがその森へ足を踏み入れる決心をしました。
エリゼは家族のために必死に働いており、貧困と困難に悩まされていました。
彼女は魔女が使う魔法の力を借りれば、家族の生活を楽にできるかもしれないと思い、勇気を振り絞って森に向かうのでした。
エリゼは森の中を歩き続け、日が沈む頃、ついに魔女の小屋にたどり着きました。
その小屋は煙が上がっており、周囲の木々が不気味に揺れていました。
エリゼは深呼吸をし、ドアをノックしました。
「誰だ?
」中から低い声が聞こえました。
「私はエリゼです。
貧しく、家族を助けたくて、魔法をお願いに来ました。
」とエリゼは恐る恐る答えました。
しばらく静寂が続き、やがてドアが開かれました。
そこには灰色のローブをまとった魔女が立っていました。
彼女の目は冷たく鋭く、まるで全てを見透かすようでした。
「なぜ私のもとに来た?
」魔女は静かに尋ねました。
「私は、家族のために何かできることを見つけたいのです。
どうか、私に力を貸してください。
」とエリゼは必死に頼みました。
魔女はしばらく黙ってエリゼを見つめていましたが、やがて重々しく言いました。
「私の力を借りるということは、代償が必要だ。
それを理解しているか?
」
エリゼは少し戸惑いながらも、頷きました。
「はい、どんな代償でも。
」
魔女は微笑みましたが、その笑みはどこか冷たく、不安を呼び起こすものでした。
「では、今から私が言うことを守ること。
それを守れなければ、魔法は使わせない。
」
「はい。
」とエリゼは答えました。
魔女はエリゼに、言われた通りの魔法の呪文を教えました。
それは、灰色の草を使って、家を豊かにし、家族を幸せにする方法でした。
しかし、その呪文には一つだけ大きな条件がありました。
それは、「一度使ったら、二度と同じ力を求めてはならない」ということでした。
エリゼはその呪文をしっかりと覚え、感謝の気持ちを込めて魔女の元を後にしました。
そして家に帰り、魔女から教わった呪文を使い、家族の生活は急速に豊かになりました。
食べ物も十分にあり、家もきれいに整い、家族は幸せになりました。
しかし、エリゼはその後、次第に欲が出てきてしまいました。
もっと豊かに、もっと幸せにと、魔女の力を再度求めたくなったのです。
彼女は魔女の家に再び訪れました。
「灰の魔女、もう一度だけ力を貸してください。
」とエリゼは頼みました。
魔女は静かに答えました。
「覚えているだろうか。
二度目の力は得られないと約束したことを。
」
エリゼはその約束を思い出しましたが、もう一度、という強い欲求が抑えられませんでした。
すると、魔女は静かに言いました。
「では、あなたは自分の欲に囚われ、約束を破った。
あなたの家はもはや幸せにはならない。
」
その瞬間、エリゼの家は崩れ落ち、豊かさは消え去り、家族も困窮してしまいました。
エリゼは深い後悔の中で、自分の愚かさを痛感しました。
それからエリゼは、二度と魔女の力を求めることなく、謙虚に暮らすことを誓いました。
彼女は灰の魔女が与えた教訓を胸に、真の幸せを求めて生きることを決意しました。
おしまい。
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