「病の魔女」(The sick witch)- ロシア
昔々、ロシアの深い森の中に、恐れられた魔女が住んでいました。
その魔女の名前はヴェロニカ。
彼女は誰も近づけないような暗い小屋に住み、魔法の力を使って人びとを試したり、村人たちの願いをかなえていたのです。
しかし、彼女には一つ大きな秘密がありました。
それは、彼女がずっと病気であり、誰にもそのことを知られていなかったのです。
ヴェロニカは若い頃、健康で力強い魔女でしたが、ある日、突然、重い病にかかってしまいました。
どんな薬を使っても、どんな呪文を唱えても、彼女の病は治ることがなかったのです。
しかし、魔女の誇り高い性格が、誰にもその病気のことを打ち明けさせませんでした。
ある冬の日、ヴェロニカの病状はさらに悪化しました。
体が弱り、動けなくなり、彼女はついに助けを求めることを決意しました。
けれども、彼女はその勇気を持つことができず、もう一度、村人たちに頼ることを躊躇っていました。
なぜなら、魔女という立場から、他の人に助けを求めるのは、決して名誉なことではないと感じていたからです。
そんな時、ヴェロニカの元に、ひとりの若い村人、イリーナが訪れました。
イリーナは小さな村で暮らしている、心優しい少女でした。
彼女は家族を支えるために毎日働いていましたが、いつも村の人びとが魔女ヴェロニカを恐れていたことに疑問を感じていました。
「魔女ヴェロニカ、あなたが病気で苦しんでいるのを聞きました。
何かお手伝いできることがあれば、私は力を貸したいと思っています」と、イリーナは慎重に言いました。
ヴェロニカは驚きました。
誰かが自分に手を差し伸べてくれるとは思ってもみなかったからです。
最初、彼女はイリーナを追い返そうとしましたが、イリーナの優しさに心が動かされました。
そこで、ついにヴェロニカは告白しました。
「実は、私は長い間、病気に苦しんでいる。
しかし、誰にも言うことができなかった。
魔女として、弱さを見せることができなかったのだ。
」
イリーナは、優しく微笑みながら言いました。
「魔女だって、病気になることはあります。
それに、誰だって助けを求めることはできるんですよ。
私は、あなたを恐れません。
だから、どうか私にできることをさせてください。
」
その言葉に、ヴェロニカは涙を流しました。
長い間誰にも見せなかった心の中の孤独や恐れが、イリーナの言葉で癒されたのです。
イリーナは、村の薬草を集め、魔法の呪文を唱えながら、ヴェロニカに必要な薬を作りました。
その薬を毎日飲み続けることで、ヴェロニカの体調は少しずつ回復していきました。
イリーナの優しさと、彼女が持っている素朴で力強い信念が、ヴェロニカの心にも深く染み渡ったのです。
数ヶ月後、ヴェロニカはすっかり元気を取り戻しました。
彼女は再び、魔法の力を取り戻し、村人たちのために力を尽くすことができました。
しかし、それ以前とは違って、彼女は以前のように孤独ではありませんでした。
イリーナとの絆が深まり、ヴェロニカは心から感謝していました。
その後、ヴェロニカは村人たちに自分の病気を打ち明けることができました。
そして、魔女としてではなく、人間として生きることの大切さに気づくことができたのです。
ヴェロニカは、病気を乗り越えたことで、他人を助けるためには自分も人びとに頼ることが大切だと学びました。
村人たちは、ヴェロニカの本当の姿を知り、彼女を以前以上に尊敬し、愛しました。
そして、イリーナとヴェロニカは、生涯にわたる親友として、共に暮らし続けました。
おしまい。
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