「蛇の花婿」(Dhëndri Gjarpër)-アルバニア
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昔々、ある村に三人の娘を持つ農夫がいました。ある夏の夜、家の近くの井戸から、不思議な声が聞こえてきました。
「おーい、この井戸の水をくんでくれる娘を、わしの花嫁にしてくれ。」
声の主はなんと、一匹の大きな蛇だったのです。
長女と次女は恐れて逃げてしまいましたが、末の娘ミラだけは立ち止まり、水をくんで蛇に差し出しました。
「ありがとう、おまえはやさしい娘だ。約束通り、わしの花嫁になってくれるか?」
ミラは少し考えてから、静かにうなずきました。父はひどく驚きましたが、ミラの決意は固く、蛇との結婚を許すことにしました。
その夜、ミラは蛇とともに森の奥深くの洞窟へと向かいました。ところが、洞窟に入った瞬間、蛇の姿が光に包まれ、ひとりの美しい青年に変わったのです。
「わたしの名はアリオル。呪いで蛇の姿をしていたが、真心をもって接してくれた者と結ばれれば、呪いが解けるのだ。」
ミラは驚きましたが、嘘のない彼の言葉と優しさに心を打たれ、ふたりは本当の夫婦となりました。
それからしばらくして、ミラは里帰りをすることになりました。青年アリオルは言いました。
「どうか、わたしの正体を誰にも話してはいけない。そうしなければ、呪いが戻ってしまう。」
ミラは約束を胸に、実家へ戻りました。ところが、姉たちはミラの変わった様子に興味を持ち、しつこく問いつめました。
「本当は誰と暮らしているの? どこに住んでるの?」
ミラは悩んだ末、ついに秘密を話してしまいました。
その瞬間、遠くの山から地鳴りが起き、黒い雲が空を覆いました。
急いで洞窟に戻ると、そこには蛇の姿に戻ったアリオルが、苦しみながらこう言いました。
「わたしの呪いは戻ってしまった。だが、まだ望みはある。七つの試練を乗り越えれば、再び人の姿になれる。」
ミラは涙をこらえて言いました。
「ならば私がその試練を受けます。あなたを取り戻すために。」
こうしてミラは、火の山を越え、凍った川を渡り、知恵の森を抜けて、七つの試練をすべて乗り越えました。
最後の試練は「沈黙」でした。蛇の姿のままのアリオルと暮らしながら、百日間、ひと言もしゃべらずに過ごすのです。
ミラは耐え抜きました。ひとことも言わずに、心で愛を伝え続けました。
そして百日目の朝、アリオルの体は光に包まれ、ふたたび人間の姿となったのです。
「ミラ、君の愛と忍耐が、呪いを完全に解いたのだ。」
ふたりはしっかりと手を取り合い、今度こそ、真実の幸せを手に入れました。
それ以来、人々は語り伝えています、
「愛とは、恐れずに信じること。そして、試練を越えてなお変わらぬ心こそが、本当の力なのだ」と。
おしまい。
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