「隠れた幽霊の屋敷」 (Hidden haunted house)- アイルランド
昔々、アイルランドの小さな村に、誰も近づかない古びた屋敷がありました。
村人たちはその屋敷を「隠れた屋敷」と呼び、恐れていました。
屋敷の周りには深い森が広がり、その森に足を踏み入れる者はほとんどいませんでした。
村人たちは、夜になるとその屋敷から奇妙な音が聞こえると言い伝えていました。
ある日、少年ジャックは村の外れに住んでいる祖父から、屋敷の話を聞きました。
「あの屋敷には、かつて貴族の家族が住んでいたが、ある晩、屋敷が火事で焼け落ちたんだ。
しかし、家族は一人も見つからなかった。
以来、誰もその屋敷に足を踏み入れたことがない。
」祖父は語り終えると、ジャックに警告しました。
「決してあの屋敷に近づいてはいけない。
」
しかし、ジャックは祖父の話を聞いても不安よりも興味の方が勝っていました。
「本当に幽霊が出るのだろうか?
」ジャックは疑問を抱きつつ、屋敷へ向かう決心をしました。
月明かりの下、ジャックは村を離れ、恐る恐る古びた屋敷に近づきました。
屋敷は、外から見る限り、何も特別なことはありませんでした。
窓ガラスは割れており、ドアは風で軋んでいるだけでした。
しかし、ジャックが一歩屋敷に足を踏み入れると、冷たい風が吹き抜け、何か不思議な気配が漂ってきました。
屋敷の中はひどく荒れ果てており、家具はほとんど残っていませんでしたが、ジャックは目を凝らして周囲を見回しました。
そのとき、突然、階段の上からギシギシという音が聞こえました。
まるで誰かが足音を立てているかのようでした。
ジャックは立ち止まり、息を呑みました。
心臓がドキドキと音を立てているのが自分でも分かりました。
「誰かいるのか?
」ジャックは声を上げましたが、返事はありません。
ただ、またギシギシと足音が響きました。
ジャックは恐怖を感じながらも、足を進めることを決意しました。
屋敷の奥へと進んでいくうちに、ジャックは階段を上り、二階の廊下に辿り着きました。
そこには、誰も住んでいないはずの部屋がひとつありました。
部屋のドアは半開きになっており、ジャックは思わずそのドアを押し開けました。
その瞬間、部屋の中に漂う冷気とともに、目の前に現れたのは、薄い影のような存在でした。
それは、かつて屋敷に住んでいた家族の姿に似ていましたが、その顔は見えませんでした。
影はジャックに向かって近づき、冷たい手を差し出しました。
「あなたは…誰?
」ジャックは震えながら問いかけました。
すると、その影は静かに語り始めました。
「私は、この屋敷に残された最後の家族。
私たちが火事で命を落とすとき、屋敷は呪われてしまった。
今も私たちはこの場所に縛られている。
」
ジャックはその話を聞いて、心が痛みました。
「それでは、あなたたちは永遠にここにいるのですか?
」と彼は尋ねました。
影はゆっくりと頷きました。
「私たちはもう解放されることはない。
でも、もしお前が私たちの代わりに呪いを受け入れてくれるなら、屋敷は解放されるだろう。
」
ジャックはしばらく考えましたが、やがて決心しました。
「私は恐れず、あなたたちを助けます。
」そう言って、ジャックは心を込めて呪いを受け入れました。
その瞬間、部屋の中に光が溢れ、影たちは消えていきました。
ジャックの目の前に、屋敷の家族の霊たちが現れ、微笑みながら言いました。
「ありがとう。
あなたのおかげで私たちは解放された。
」
ジャックはその後、無事に村へ帰ることができました。
屋敷はもはや恐ろしい場所ではなくなり、村人たちもその後、安心して生活することができました。
それから数年後、ジャックは村の英雄となり、屋敷のことはもはや語られなくなりました。
ただ、時々、村人たちは月明かりの下で、ジャックの勇気ある行動を思い出して、心温まる笑顔を見せるのでした。
おしまい。
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