「カーニバルの王様」(The King of Carnival)-ブラジル
昔々、ブラジルの陽気な街、リオデジャネイロの近くに、美しい王国がありました。
この王国では、毎年カーニバルの季節になると、街じゅうが色とりどりの衣装と音楽で溢れ、国中の人びとが楽しみのために集まりました。
しかし、カーニバルの真の魅力を知っているのは、王様だけでした。
王様の名前はレオポルド。
彼はすべての人びとに優しく、賢明な王でしたが、カーニバルのときだけは少し特別な存在となりました。
なぜなら、王レオポルドは、カーニバルを本当に楽しむために、王冠を外して、一般市民と同じように仮装して参加することが習慣だったのです。
ある年のカーニバルの前、王様は不安な表情をしていました。
何故なら、最近、カーニバルを祝うための準備がうまく進んでいなかったからです。
音楽隊が集まらず、パレードの道具もまだ完成していなかったのです。
王国中がカーニバルに向けて忙しく動いているのに、王様は心配で夜も眠れませんでした。
そこで王様は、街を一巡りすることに決めました。
王様は王冠を外し、普通の服に着替えて街へと出かけました。
リオデジャネイロの街じゅうでは、すでにカーニバルの準備が始まっており、人びとが楽しそうに踊り、歌い、飾りを取り付けていました。
王様が街の広場に到着すると、さまざまな職業の人びとが集まっていました。
ダンサー、楽器奏者、道具職人、衣装作りをしている人びとなど、皆が手分けしてパレードの準備をしていました。
しかし、王様は彼らの中に少し悲しげな表情をした男を見つけました。
男は、一生懸命にドラムを作っていましたが、どうしても上手くいかない様子でした。
王様は男に近づき、「どうしたのだ?
」と声をかけました。
男は少し驚いた顔をしましたが、すぐに答えました。
「王様、すみません。
カーニバルのためのドラムが、どうしても上手く作れないのです。
カーニバルを楽しむために必要なのに、間に合わないかもしれません。
」
王様はその男を優しく見つめ、「大丈夫だ、少しだけ助けてくれ。
私も手伝おう。
」と言って、男と一緒にドラム作りを始めました。
王様は自分の手でドラムを完成させ、男に「これで大丈夫だろう。
皆が楽しめるように、心を込めて演奏しよう。
」と励ましました。
その後、王様はさらに街を歩き、ほかの準備をしている人びとにも声をかけていきました。
みんな王様の姿に驚きましたが、王様は一緒に踊ったり、歌ったりしながら、みんなの士気を高めていきました。
そして、カーニバルの準備は、王様のおかげで順調に進んでいきました。
カーニバルの日がやってくると、街は色とりどりの衣装を着た人びとで埋め尽くされ、街全体が音楽と踊りに包まれました。
王様は自分の王冠を取り戻し、今度は王様として、カーニバルの先頭に立ちました。
しかし、その日はどこか特別でした。
王様は王冠をかぶりながらも、普段の厳格さを忘れ、民と一緒に楽しみ、笑い、踊りながらパレードを進みました。
その年のカーニバルは、王国の歴史の中で最も素晴らしいものとなり、民衆はその年の王様を「カーニバルの王様」として讃えました。
王様は民と共に過ごすことができる喜びを感じ、毎年カーニバルの時期が来るのを心待ちにするようになりました。
カーニバルの本当の意味を、王様はついに理解しました。
それはただの祭りではなく、皆が一つになり、喜びを分かち合い、日常の苦しみを忘れて楽しむ時間なのだと。
そして、王国はますます幸せな場所となり、王様レオポルドの名は、民の心に永遠に残ることとなったのです。
おしまい。
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