「トウモロコシの誕生」(El origen del maíz)-メキシコ
トウモロコシの誕生はメキシコの物語です。
昔々、まだ人々が食べものに困っていたころ、山も川も動物たちも、すべてが静かに見守っていました。人間たちは果物や根っこを探して生きていましたが、空腹を満たすことはできませんでした。
神々はそれを見て心を痛めました。そして、「人間たちに力を与える食べ物を与えよう」と決めました。しかし、その食べ物は、地の奥深くに隠されていたのです。
あるとき、ひとりの若者が現れました。彼の名前は“ナナワツィン”。心優しく、弱いものに手を差し伸べる青年でした。神々は、彼に秘密の食べものを探し出す使命を与えました。
ナナワツィンは険しい山々を越え、乾いた谷を歩き、ついに大きな岩の前にたどり着きました。神の声がささやきます。
「岩の中に、人々を救う食べ物が眠っている。おまえの心の強さで、岩を開けなさい。」
ナナワツィンは祈りながら手を当て、岩に心を込めて話しかけました。すると、ゴゴゴゴ…という音とともに、岩が静かに割れました。
中から現れたのは、黄金色の粒がぎっしり詰まった植物。それが、初めて人間の前に現れたトウモロコシだったのです。
ナナワツィンはそれを村に持ち帰り、人々とともに土に植えました。太陽の光を浴び、雨のしずくを受けて、トウモロコシはぐんぐん育ちました。
やがて、大地いっぱいにトウモロコシが実り、人々は豊かに暮らせるようになりました。
人々は毎日、感謝の気持ちをこめて、トウモロコシを大切に食べました。トルティーヤ、タマレス、アトレ…たくさんの料理が生まれました。
こうして、トウモロコシはメキシコの命の糧となり、今も人々の心と食卓を支えているのです。
おしまい。
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