「パン職人と魔法のパン」(The baker and the magic bread)- ポーランド
昔々、ポーランドの小さな村に、イヴァンという名のパン職人がいました。
イヴァンは村一番の腕前を持ち、誰もが彼の焼くパンを楽しみにしていました。
そのパンは、外はカリッと、中はふわふわで、どんな人でも一口食べれば笑顔になれる美味しさでした。
ある日、村に年老いた旅人がやってきました。
彼は非常に疲れきっていて、食べ物を求めていたので、イヴァンのパン屋に入ってきました。
イヴァンは温かいパンを手渡し、親切にお茶も勧めました。
旅人は心から感謝し、イヴァンにこう言いました。
「お前のパンは本当に素晴らしい。
だが、もしお前がもっと特別なパンを作りたければ、私が教えてやろう。
そのパンは、どんな願いも叶えてくれる魔法のパンだ。
」
イヴァンは驚きましたが、旅人の言葉に興味を持ちました。
彼は言いました、「もし本当に魔法のパンを作れるのであれば、教えてください。
でも、そんな力が本当にあるのでしょうか?
」
旅人はにっこりと笑い、「お前の心が清らかであれば、その力を得られるだろう」と答えました。
次の日、旅人はイヴァンに魔法のパンの作り方を教えてくれました。
そのパンは、材料が普通のパンと変わらないにもかかわらず、焼くときに特別な呪文を唱えることで、食べた人の心の中で最も強く願うことが叶うと言われていました。
イヴァンはその日から、魔法のパンを作り始めました。
最初は少し不安でしたが、彼が呪文を唱えながら焼いたパンは、どれもふわっと輝き、食べた人びとの願いが本当にかなうことに気づきました。
村人たちはそのパンを食べ、幸せな出来事が次々と起こるようになりました。
病気だった人が元気になり、貧しい家族が突然大きな富を手に入れるなど、村は奇跡的な変化を遂げました。
しかし、ある日、村に住む金持ちの商人がイヴァンの元にやってきました。
商人は自分の商売をさらに大きくし、もっと多くの金を手に入れたかったのです。
彼はイヴァンに言いました。
「もし、私の商売がうまくいくように魔法のパンを作ってくれれば、君にたくさんのお金をあげよう。
」
イヴァンは少し考えましたが、商人の心が貪欲であることを感じ取っていました。
彼は魔法のパンを作るのをためらいながらも、商人にパンを一つ焼いて渡しました。
そのパンを食べた商人は、すぐに商売がうまくいくことを望みました。
しかし、その夜、商人はすべての富を手に入れることができたものの、それと同時に村の美しい景色が荒れ果て、農作物は枯れ、動物たちは姿を消してしまいました。
イヴァンはすぐに気づきました。
魔法のパンは、心から望むことがかなうものの、それが人びとや自然にとって本当に良いことであるかどうかは、慎重に考えなければならないことを学びました。
商人が求めた「もっと多くの金」をかなえた結果、村の人びとや自然が大きな犠牲を払ってしまったのです。
そこでイヴァンは、魔法のパンをもう二度と作らないことを決意しました。
彼は旅人が教えてくれたことを心に留め、どんなに強く願っても、他人や自然に害を与えないように心を込めて物事を行う大切さを学びました。
イヴァンはその後も美味しいパンを焼き続け、村人たちは彼のパンを愛し続けました。
そして、イヴァンは魔法のパンではなく、自分の手作りの温かなパンが一番だと気づいたのです。
おしまい。
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