「プリンセスと山の巨人」(Përralla e Bukura e dheut)-アルバニア
昔々、青い山と緑の谷に囲まれた小さな国に、「大地の美姫(びき)」と呼ばれる美しいお姫さまがいました。長い金色の髪、すみれのような瞳、そして心まで清らかで、国じゅうの人々に愛されていました。
ところがある日、山奥から恐ろしい山の巨人が現れ、お姫さまをさらってしまったのです。巨人は、大地の美姫の美しさに心を奪われ、自分の妻にしようとしていたのです。
王様は深く悲しみ、国中におふれを出しました。
「だれか、大地の美姫を救ってくれたならば、その者に国の半分と、お姫さまとの結婚を許そう!」
勇ましい騎士たちが次々と山へ向かいましたが、誰一人として戻ってはきませんでした。巨人の城は、黒い霧と魔法の罠に守られていたのです。
そんな中、小さな村に住む羊飼いの少年・イリアンが名乗りを上げました。力はありませんが、賢くて心優しい少年です。村の長老が、彼に一本の魔法の笛を授けて言いました。
「この笛を使えば、眠りを呼ぶ力がある。ただし、一度しか使えぬぞ。」
イリアンは笛とパンを少し持って、山へと旅立ちました。険しい道を越え、嵐をしのぎ、ついに巨人の城へたどり着きました。城は黒い岩でできており、空には雷がとどろき、周囲には骨が散らばっていました。
恐る恐る中に入ると、そこには暗い部屋に鎖でつながれたお姫さまがいました。顔はやつれていましたが、目には強い光が宿っていました。
「あなたは。助けに来てくれたの?」
イリアンは小さくうなずきました。けれどそのとき、地響きとともに、山の巨人が現れたのです。体は岩のようにごつごつし、目は炎のように赤く燃えていました。
「だれだ、わしの宝を盗みにきたのは!」
イリアンは震える手で笛を吹きました。高く、優しい音が山の城に響くと、巨人の目がゆっくりと閉じ、ドスンと倒れて眠りにつきました。
急いでお姫さまの鎖を解くと、お姫さまが小さな袋から、金色の種を取り出しました。
「これは母から受け継いだ、大地の守りの種。逃げ道をつくれるわ。」
種を地面にまくと、巨大な木が一瞬で空高くのび、ふたりをその枝に乗せて谷のふもとまで運んでくれました。
こうしてイリアンと大地の美姫は無事に王国へ帰り、人々は歓声をあげてふたりを迎えました。王様も涙を流して喜び、約束どおりイリアンを王子として迎えました。
それからふたりは仲良く結ばれ、国はますます豊かになりました。山の巨人はそれきり目を覚ますことなく、深い眠りについたままだといいます。
おしまい。
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