「ヘルマンと白い馬」(Hermann und das weiße Pferd)-スイス
ヘルマンと白い馬はスイスの物語です。
昔々、スイスの小さな山あいの村に、ヘルマンという心のやさしい男の子が住んでいました。ヘルマンは毎日、山のふもとで羊を追いながら、空に浮かぶ雲や、川のせせらぎを聞くのが大好きでした。
ある日のこと、霧のたちこめる朝に、ヘルマンは見たこともない白くて美しい馬に出会いました。その馬はまるで雪のように白く、たてがみは光にきらめいていて、ふしぎな目をしていました。
「こんにちは、白い馬さん。どこから来たの?」
ヘルマンが話しかけると、馬は静かにうなずきました。まるで、言葉を理解しているかのようでした。
それからというもの、白い馬は毎朝ヘルマンの前に現れ、一緒に野をかけたり、風の中を走ったりしました。ふたりはすぐに仲良しになりました。
けれど、ある日、村に嵐がやってきました。風が木々をなぎ倒し、川があふれ、家々に水が押し寄せました。人々は困り果て、どうしていいかわかりませんでした。
そのときです。白い馬がヘルマンのところへ走ってきて、背中に乗るようにうながしました。
「ぼくがみんなを助けるんだね?」
ヘルマンはこくんとうなずき、馬にまたがりました。ふたりはすごい速さで走り出し、山の向こうにある安全な高台へ、次々と村の人を運んでいきました。
何度も何度も行き来して、ようやく全員を助け終えたころ、夜明けの光が山を照らしはじめました。白い馬はヘルマンのほおに鼻をこすりつけると、そっと森の奥へと姿を消しました。
それからというもの、白い馬はもう二度と現れませんでした。でも、村の人たちは今でも語りつづけています。
「嵐の夜、勇気とやさしさで私たちを救ってくれたのは、あの白い馬と、少年ヘルマンだったんだよ」と。
おしまい。
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