「ヤクと少女」(The Yak and the Little Girl)-ブータン
昔々、ブータンの美しい山々に囲まれた小さな村がありました。
この村には、アンジュという名前の小さな少女が住んでいました。
アンジュはとてもやさしく、村の人びとや動物たちと仲良く暮らしていました。
特に、村の近くの草原で飼われているヤクが大好きでした。
ヤクたちは大きくて力強い動物で、村人たちの大切な財産です。
彼らは重い荷物を運んだり、毛を刈られて温かい衣服を作るために使われました。
アンジュはヤクたちと遊んだり、草を与えたりして、毎日楽しい時間を過ごしていました。
ある冬の日、村に大きな嵐が訪れました。
風は強く、雪はひどく降りしきり、村の人びとは家にこもっていました。
アンジュも家の中で暖かく過ごしていましたが、外の雪がどんどん積もっていくのを見て心配になりました。
翌日、嵐が少しおさまると、アンジュはヤクたちのことが気になって、外に出ることにしました。
「ヤクたちが寒さで大変な思いをしていないかしら?
」アンジュは心配そうに言いました。
外に出ると、雪は深く積もっていて、歩くのも大変でした。
でも、アンジュはヤクたちのことを思うと、どうしても心配でたまりませんでした。
ヤクたちは雪の中でも元気に草を食べていましたが、寒さで息が白く立ち上っていて、少し震えているように見えました。
その時、アンジュは思いつきました。
「暖かい場所を作ってあげよう!
」
アンジュは近くの小屋に向かい、そこで古い藁を集めました。
雪を踏み固めながら、できるだけ早くヤクたちに温かい場所を作ろうと頑張りました。
しばらくして、雪をかき分けて藁の上に寝床を作ることができました。
ヤクたちはその場所に一目散に駆け寄り、暖かそうに寝転がりました。
アンジュがほっと一息ついた時、突然、背後から大きな音が聞こえました。
振り返ると、一本のヤクが一頭、雪の中から現れました。
そのヤクは、普段は見かけない、村の中でも少し珍しい大きなヤクでした。
彼の体はとても大きく、黒い毛が輝いていました。
「このヤクはどこから来たのだろう?
」アンジュは驚きましたが、そのヤクは何かを伝えるように、静かにアンジュを見つめていました。
そのヤクは、ゆっくりとアンジュの方に歩み寄り、そして彼女の目の前で膝をついて座りました。
アンジュは少し驚きましたが、そのヤクが伝えようとしていることがわかる気がしました。
「君は、私に何を伝えたいの?
」アンジュはそのヤクに語りかけました。
すると、そのヤクは静かに立ち上がり、アンジュの手に何かを持たせてくれました。
それは、光り輝く小さな石でした。
その石は温かく、まるで太陽のように暖かい光を放っていました。
「これは、あなたの助けを感謝する気持ちの印です。
」ヤクは言わずとも伝わってきました。
アンジュはその石を大切に握りしめ、ヤクに向かって深くお辞儀をしました。
「ありがとう。
私はあなたに助けられました。
」
ヤクは静かにうなずき、再び雪の中に消えていきました。
アンジュはその後、村に戻り、ヤクたちを見守り続けました。
あの日から、アンジュはその光り輝く石を大切に保管し、寒い日にはその石を見つめながら、ヤクたちを思い出しました。
その後、村には厳しい冬の寒さが続きましたが、アンジュはヤクたちとともに過ごし、村の人びとにも愛と助けを与え続けました。
ヤクもまた、彼女の優しさに応えるように、村人たちを支えるために力を貸してくれました。
そして、アンジュが成長するにつれて、彼女の心の中には、愛と優しさ、そして自然と動物への感謝の気持ちがしっかりと根付いていきました。
ヤクたちもその気持ちを感じ取り、村の中で大切な存在となりました。
おしまい。
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