「悪魔の契約」(devil's contract)- スウェーデン
昔、スウェーデンのとある小さな村に、ヨハンという青年が住んでいました。
ヨハンは真面目で心優しい青年で、村の人びとからも信頼されていました。
しかし、彼には一つの悩みがありました。
それは、家計が困窮していて、父親が病気で働けないため、家計を支えるために必死に働かなければならなかったことです。
ある日、ヨハンが畑で仕事をしていると、突然、一人の男が現れました。
その男は全身黒い服を着て、顔を隠したフードをかぶっていました。
男はヨハンに近づき、こう言いました。
「私は何も求めず、ただ君に手助けをしよう。
君が必要としているものを、私はすべて与えることができる。
」
ヨハンはその男に驚きましたが、男の言葉に引き寄せられました。
彼は尋ねました。
「あなたは誰ですか?
なぜ、私を助けようと思うのですか?
」
男はニヤリと笑い、答えました。
「私は、君がよく耳にするであろう存在だ。
悪魔さ。
君が欲しいもの、すべてを与える代わりに、君は私に一つだけ誓いを立てなければならない。
君の魂を、私に捧げるのだ。
」
ヨハンは一瞬、立ちすくみました。
魂を売るという話は聞いたことがありましたが、それが本当に現実になるとは思ってもみませんでした。
しかし、家族のために苦しみ続ける日々に疲れ果てていたヨハンは、ついその契約を結ぶことを決意しました。
「あなたが本当に私に助けをくれるのなら、契約を結びます。
しかし、後悔はしません。
」
悪魔は満足げに頷き、ヨハンに手を差し伸べました。
「良い選択だ。
これで君の願いはすぐにかなうだろう。
」
その瞬間、ヨハンの体に不思議な力が満ちていきました。
畑の作物は一夜にして実り、家の修理もあっという間に終わり、ヨハンの生活は一変しました。
父親の病も治り、家計は豊かになり、ヨハンは村で最も成功した若者となりました。
しかし、悪魔との契約には代償がありました。
ヨハンの幸せが長く続くことはありませんでした。
ある日、悪魔が再び現れ、ヨハンに告げました。
「君は私と交わした契約を忘れてはいないだろうな。
約束の日が来た。
君の魂を私に渡す時が来たのだ。
」
ヨハンは恐怖に震えました。
彼は一度、契約を結んだことを後悔し、必死に悪魔から逃れようとしました。
「お願いだ、助けてくれ!
私はもう十分だ!
もう何も望まない!
」
しかし、悪魔は冷たく言いました。
「契約は契約だ。
君が望もうと望むまいと、契約を破ることはできない。
」
その時、ヨハンは思い出しました。
彼が心の中で信じていたこと、それは「人びとには助け合い、誠実であれ」というものでした。
ヨハンは悪魔に言いました。
「私は魂を渡すことはできません。
でも、私が他の人びとに与えた幸せが、私の魂に変わるなら、それが私の契約だ。
」
悪魔は一瞬黙り込みましたが、やがてヨハンの言葉に耳を傾けました。
そして、彼の魂は悪魔に取られることなく、自由を得ることができました。
「君は見事に自分の運命を切り開いた。
だが、これからもその心を忘れるな。
」悪魔はそう言い残して消えました。
ヨハンは再び自由を手に入れ、家族と村の人びとを幸せにするために生きる決心をしました。
彼は悪魔との契約を乗り越え、真実の心を持って生きることを誓いました。
おしまい。
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