「悪魔の姿」(The Devil's Image)- ブルガリア
昔々、ブルガリアの小さな村に、アレクサンドルという若者が住んでいました。
アレクサンドルは誠実で勤勉な青年でしたが、村の人びとは彼をあまりにも無口で物静かな性格だと思っていました。
家族を養うために日々働き、他の人びととの交流は少なく、ひっそりと暮らしていました。
ある冬の夜、村に見知らぬ男が現れました。
その男は漠然とした不気味な雰囲気を漂わせており、誰もが彼を恐れていました。
彼の名はヴラドといい、村に住む者には誰もが気味悪く感じていたのです。
ヴラドはアレクサンドルに興味を持ち、話しかけました。
「君の目の輝きは特別だ。
私は人びとの本当の姿を知りたくて、君に話を聞きたくて来たのだ。
」アレクサンドルはその言葉に疑念を抱きつつも、無下に断ることができませんでした。
「私に話してほしい、君の心の中にある本当の思いを。
」ヴラドは優雅に言いました。
「君が何を求め、何を望んでいるのか、それがわかれば、私は君に素晴らしい贈り物を与えることができるのだ。
」
アレクサンドルは少し考えました。
長い間、自分の願いを他人に話すことはなかったのです。
しかし、ヴラドの言葉には何か引き寄せられるものがあり、ついに彼は口を開きました。
「私は…富が欲しいのです。
」アレクサンドルは心の中の深い部分からそう言いました。
「家族を豊かにし、周りの人びとから尊敬される存在になりたい。
」
ヴラドはにやりと笑うと、「君が本当に望むものを与えてやろう」と言いました。
「だが、代償が必要だ。
それを理解できるなら、私は君に望み通りの力を授けよう。
」
アレクサンドルは少し驚きましたが、富を手に入れるためには代償を払う覚悟を決めました。
「私が代償を払う覚悟があることを理解しています。
」彼は静かに答えました。
「では、この契約を結びなさい。
」ヴラドは契約書を差し出し、アレクサンドルにサインをさせました。
その瞬間、彼の目の前に黄金が現れ、彼の手には無限の富が与えられました。
その後、アレクサンドルは急速に村で最も成功した商人となり、富を手に入れました。
しかし、次第に彼は自分の姿に違和感を感じ始めました。
ある日、鏡の前で自分を見つめていると、ふと恐ろしいことに気づきました。
彼の顔はだんだんと変わり、目がぎょろぎょろと赤く輝き、肌は青白く、まるで悪魔のような顔つきになっていたのです。
アレクサンドルは恐怖に駆られ、鏡を割り、家を飛び出しました。
村の人びとも彼の変わり果てた姿を見て、恐れおののきました。
誰も彼に近づこうとはしませんでした。
もはやかつての誠実な青年の面影はどこにもありませんでした。
アレクサンドルはヴラドを探し求め、山奥の古びた館へと向かいました。
「ヴラド!
」彼は叫びました。
「私の姿が変わってしまった。
どうしてこんなことになったのか?
」
ヴラドは静かに現れ、にやりと笑いました。
「お前は私に契約したのだ。
だが、富を求める者は、やがてその欲望に囚われ、真実を見失う。
そして、その代償として、魂が変わるのだ。
お前の姿が変わったのは、君が欲望に取り憑かれてしまったからだ。
」
アレクサンドルは絶望的な気持ちに駆られ、地面にひれ伏しました。
「私はもう戻れないのか?
元の姿に戻りたい。
」
ヴラドは冷たく言いました。
「お前の心の中に純粋な思いが戻れば、姿も戻るだろう。
だが、それには一つの試練を超えなければならない。
」
アレクサンドルは深く考えました。
そして、彼は決心しました。
「私は他人を助けることで、この呪いを解こう。
」
その後、アレクサンドルは村に戻り、富を使って困っている人びとを助け始めました。
彼は自分の持っていた富を惜しまず分け与え、村の人びとを助け、みんなのために尽力しました。
時間が経つにつれて、彼の姿は元に戻り、再びかつての誠実で親切な青年の姿が現れました。
そして、アレクサンドルは悟りました。
真の富とは、金や物ではなく、他人を思いやる心だということに。
彼は心からの幸せを見つけ、村の人びとに尊敬される存在となったのでした。
おしまい。
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