「東の風の王国へ」(The Kingdom of the East Wind)-ノルウェー
昔々、北の国に、ハルヴァルという若者がいました。
ハルヴァルは正直で働き者でしたが、とても貧しく、毎日畑を耕しながら暮らしていました。
ある日、強い東風が吹き荒れ、彼の畑の作物をすべて吹き飛ばしてしまいました。
困ったハルヴァルは、風に向かって叫びました。
「おい、東風!
お前が作物を持っていったなら、それに見合うものを返してくれ!
」
すると、どこからか声が響きました。
「ならば、東の風の王国へ来るがよい。
」
ハルヴァルは風に導かれ、海を渡り、険しい山を越えて旅をしました。
何日も歩いた末、ようやく雲に包まれた美しい城にたどり着きました。
それが東の風の王国でした。
城の中へ入ると、東風の王が現れました。
長い髭をたくわえ、青いマントをまとった威厳のある老人でした。
「よく来たな、若者よ。
お前の作物を奪ったのは、わしの風が強すぎたせいじゃったな。
」
王は申し訳なさそうに言うと、黄金の袋を差し出しました。
「この袋を持って帰るがよい。
中には、お前が失ったもの以上のものが入っておる。
」
ハルヴァルは袋を受け取り、感謝して帰ることにしました。
しかし、帰る途中で宿屋に泊まることになり、そこにいた欲張りな宿屋の主人が袋を見て言いました。
「そんなに大事なものなら、開けてみたらどうだ?」
ハルヴァルが少し袋を開けると、中から金貨があふれ出しました。
それを見た宿屋の主人は、ハルヴァルが眠っている間に袋をすり替えてしまいました。
翌朝、ハルヴァルは何も知らずに家へ帰りました。
しかし、袋を開けても金貨は出てこず、ただの枯葉ばかりでした。
「だまされた!
」
ハルヴァルは再び東の風の王国へ向かいました。
王は彼の話を聞くと、うなずいて言いました。
「そうか、ならば、もう一つ別の贈り物をやろう。
このテーブルクロスを持っていくがよい。
『ごちそうよ、現れよ!
』と言えば、どんな料理でも出てくるぞ。
」
ハルヴァルは喜んで帰る途中、またあの宿屋に泊まりました。
宿屋の主人はまたもや彼をだまし、テーブルクロスを別の布とすり替えてしまいました。
再び何も得られず家に戻ったハルヴァルは、三度目の旅に出ました。
王は彼の誠実さを見て、今度は木のこん棒を渡しました。
「このこん棒に『悪党を懲らしめろ!
』と命じれば、悪者をこらしめてくれる。
」
ハルヴァルは宿屋に戻り、主人に言いました。
「今度はとても面白い贈り物をもらったよ。
見ていてくれ。
」
そして、こん棒に命じると、こん棒は主人の周りを飛び回り、彼の背中を叩き始めました。
主人は驚き、命乞いをしました。
「すまなかった!
返すから、こん棒を止めてくれ!
」
ハルヴァルは袋とテーブルクロスを取り戻し、満足して家へ帰りました。
その後、彼は金貨で豊かになり、魔法のテーブルクロスで誰もが幸せになれるごちそうをふるまいました。
そして、もう悪事を働かなくなった宿屋の主人とも仲直りし、みんなが幸せに暮らしましたとさ。
おしまい。
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