「池を守ったカメの知恵」(The Wisdom of the Turtle Who Protected the Pond)-スリランカ
昔々、山のふもとの森に、きれいな池がありました。池にはたくさんの魚やカエルがすみ、空からは鳥たちが水を飲みにやってきました。池のほとりには、一ぴきのカメがすんでいて、みんなから「じいさまカメ」と呼ばれていました。
じいさまカメは、年をとっていましたが、とてもかしこくて、池の仲間たちにいろいろなことを教えていました。仲よくすること、雨の前ぶれ、そして森に入ってくる人間の気配まで――。
ある年のことです。空は何日も晴れつづけ、雲ひとつ出ません。太陽はぎらぎらと照りつけ、池の水がどんどん少なくなっていきました。
「たいへんだ!このままじゃ池が干あがっちゃう!」
「どこか、ほかの池にうつろうか?」
魚たちやカエルたちはあわてました。でも、じいさまカメはゆっくりと首を持ちあげて言いました。
「まっておくれ。池を捨ててにげる前に、考えることがある。ほかの池も、きっと干上がっておる。だが、この池にはまだわずかな水と、私たちの知恵がある」
動物たちは耳をすませました。カメはつづけます。
「わたしは、ここに残る。そしてこの池を守る知恵をしめそう」
次の日から、じいさまカメは池のふちに小さなみぞをほり、水が集まるようにしました。大きな葉っぱを運んで日かげを作り、小鳥たちにも知らせて、くちばしで水をはこんでもらいました。
するとどうでしょう――池のまんなかに、ほんのすこしですが水が残り、その中にみんなが身をよせあってくらせるようになったのです。
しばらくして、ようやく黒い雲がわき、雷がなり、雨がざあざあとふってきました。池はふたたび水でいっぱいになり、動物たちは大よろこび。
みんなはカメのまわりに集まり、こう言いました。
「じいさまカメ、あなたがあきらめなかったから、私たちはここで生きのびることができました!」
カメはにこりと笑って言いました。
「池を守るというのは、水を守るだけではない。思いやりと、知恵と、協力の心を守ることなんじゃよ。」
それからというもの、動物たちはむやみに池をにごさず、協力して森を守りながらくらすようになったそうです。
このカメこそ、実は遠い昔のお釈迦さまの前世のお姿だったのです。
仏さまは、生きもののいのちと、自然のつながりの大切さを、カメのかたちで人びとに教えてくださったのでした。
おしまい。
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