「裏返しの王国」(El Reino del Revés)-アルゼンチン
あるところに、「裏返しの王国」という、とても不思議な国がありました。
この国では、すべてがひっくり返っていて、ふつうの世界とはまったくちがいます。空には魚が泳ぎ、海の中には鳥たちが飛んでいました。人々はあたまの上に靴をはき、手には帽子をかぶって歩きます。
ある日、小さな女の子マルタがその国にまよいこみました。目をぱちぱちとさせて見ると、うさぎが自転車を逆さまにこぎながら空をとんでいて、犬はにゃーと鳴き、ネコはワンワンとほえていました。
「ここはいったい、どこなの?」マルタがつぶやくと、近くにいたおばあさんカエルがニッコリ笑って答えました。
「ここは裏返しの王国よ。すべてがさかさま、でもみんな幸せにくらしているの。」
マルタはびっくりしながらも、王国の中を探検することにしました。学校では、こどもたちが先生に授業をしていて、「今日は先生にひらがなを教える日です!」と楽しそう。お昼ごはんでは、スープは氷のようにつめたくて、アイスクリームはふーふーしないとたべられないほど熱々でした。
やがて、マルタはお城へとたどりつきました。そこにいたのは、ひげのはえたお姫さまと、ティアラをかぶった王子さま。ふたりはにこにこと笑ってマルタに言いました。
「マルタさん、あなたは裏返しの王国にぴったりの心をもっているね。ものごとを反対から見てみることも、ときには大切なんですよ。」
マルタはうなずきました。そして、「もうすぐ帰らなきゃ」と言うと、お姫さまはやさしくほほえみました。
「また、いつでも遊びにきてね。この王国は、想像するだけで、どこにいても来られるのよ。」
マルタが目をとじて、もう一度開けたとき、彼女はベッドの上でした。まくらの下からは、裏返しの王国の小さな地図がひらりと落ちてきました。
それからマルタは、ときどき目をとじて、ふしぎな王国のことを思い出すのです。空をとぶ魚、にゃーと鳴く犬、そして逆さまの笑い声…。
想像の世界は、今日もどこかで、風にのって歌っているかもしれません。
おしまい。
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