「魔法の時計」 (Die Zauberuhr) - ドレスデン地方
昔々、ドレスデン地方の小さな村に、トーマスという少年が住んでいました。
トーマスは、村の外れにある古びた家で、祖父と一緒に暮らしていました。
祖父は時計職人で、村一番の技術を持っており、どんな壊れた時計でも完璧に修理できることで知られていました。
ある日、トーマスが祖父の工房を手伝っていると、古い木製の箱が目に留まりました。
その箱には不思議な模様が刻まれていて、まるで魔法のような雰囲気を持っていました。
トーマスは興味津々で箱を開けてみると、その中には一つの美しい時計が入っていました。
時計は金色に輝き、針は今にも動き出しそうでした。
「祖父、この時計はどこから来たのですか?
」とトーマスは尋ねました。
祖父はしばらく黙っていましたが、やがて静かに答えました。
「それは、私が若い頃、特別な旅をして手に入れた時計だ。
普通の時計ではない。
この時計は、時間を操る力を持っているんだ。
」
トーマスは驚きました。
「時間を操る力?
」
祖父は頷きました。
「そうだ。
だが、注意しなければならない。
時計を使うときは、心の中で何を望むかをよく考えることが大切だ。
もしも心の中で間違った願いを持って使ってしまうと、取り返しのつかないことになるかもしれない。
」
トーマスはその言葉を胸に刻み、時計を手に取りました。
その瞬間、時計の針が少しずつ動き始め、まるで魔法のように空間が歪んでいきました。
「これは本当に魔法の時計だ!
」トーマスは興奮して叫びました。
その夜、トーマスは一人で時計を使ってみることに決めました。
時計の針を動かすと、時間が一瞬で戻り、村の広場にあった古い店が新しく、輝いて見えました。
トーマスは感動しながらも、時間を戻す力に少し恐れを感じていました。
次の日、トーマスはもう一度時計を使い、別の願いを心の中で思い浮かべました。
「今度は、もっと速く村の外れにある森に行けるようにしたい!
」時計の針を進めると、彼はまるで風のように速く走り出しました。
どんな速さでも走り続けることができました。
しかし、そのうちトーマスは気づきました。
時間を操ることは面白いけれど、どこかで何かがずれているような気がしました。
時計を使うたびに、周りの人びとの生活が少しずつ変わってしまっているように感じたのです。
村の人びとは、いつもと違う行動をしていたり、何かが間違った方向に進んでいたりしました。
ある晩、トーマスはついに祖父に相談しました。
「祖父、どうして時計を使うたびに、村の人びとが変わってしまうんでしょうか?
」
祖父は深刻な顔で答えました。
「それは、時間を操る力には大きな代償が伴うからだ。
時間を動かすことで、他のものが変わってしまう。
君が時間を操ることで、村の運命や、人びとの心が微妙にずれてしまっているんだ。
」
トーマスは反省しました。
「もう時計を使わない方がいいんですね。
」
祖父は穏やかに笑いました。
「君が学んだことが大切だ。
魔法の力を持つものには、責任が伴う。
もしも本当に大切なものを守りたいなら、時計に頼らず、自分の力で道を切り開くことが大切なんだよ。
」
その夜、トーマスは魔法の時計を再び手に取り、決心しました。
時計の針を元の位置に戻すと、村の広場や人びとの生活は元通りに戻り、時間は正しい流れを取り戻しました。
それからというもの、トーマスは時計を使うことなく、祖父から学んだ技術を活かして、立派な時計職人となり、村の人びとに愛される存在となりました。
時計の魔法の力を使うことなく、彼は自分の力で未来を切り開いていったのです。
おしまい。
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