「鹿の王と狩人」(The Deer King and the Hunter)-スリランカ
鹿の王と狩人はスリランカの物語です。
昔々、深い森の中に、一ぴきの美しい鹿がすんでいました。体は金色にかがやき、目はやさしく光っていました。鹿はこの森の王、「ルク・シンハ(大いなる鹿)」とよばれていました。
ルク・シンハは、森の動物たちのために、争いを止めたり、食べ物を分けたりして、いつもみんなを守っていました。動物たちは、そんな王を心からしたっていました。
ある日、一人の狩人が森に入り、わなをしかけました。そのわなに、まだ若い鹿の子がかかってしまったのです。子鹿はふるえて助けを求めました。
それを見つけたのが、ルク・シンハです。王はためらわず、子鹿をかばいながら狩人の前に立ちました。
「どうか、この子のかわりに、私を連れていってください。この子にはまだ、森で生きる時間があります」
狩人はおどろいて言いました。
「おまえは、自分から命をささげるというのか?なぜだ?」
鹿の王は静かに答えました。
「私はただ、正しい道を歩みたい。弱いものを守るのが、強き者の役目だからです」
そのことばに、狩人の心はふるえました。彼は弓を下ろし、涙をぬぐいました。
「わたしは今まで、なんのために狩りをしていたのだろう。あなたのような心に出会えたのは、初めてです」
狩人はわなをほどき、鹿の子を自由にし、ルク・シンハにも深く頭を下げました。
それからというもの、狩人は森に弓を持ちこまず、代わりに木の実を集める仕事を始めました。そして、ルク・シンハの話は村にも伝わり、人々は鹿王の知恵とやさしさを語りつづけました。
――この金色の鹿こそが、じつは遠いむかしの釈迦(しゃか)、つまり仏さまの前世のお姿だったのです。
生まれかわっても、やさしさと正しさを大切にする。
それが、仏さまの心なのです。
おしまい。
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