マルタの迷信
マルタ共和国は、地中海の小さな島国でありながら、古代文明、カトリック教会、アラブやイタリアの影響など、様々な文化が交差する歴史を持っています。そのため、マルタで信じられている迷信も豊かで多様です。これらの迷信は、農村の口承伝統や宗教的信仰と結びつき、人々の生活の中で今なお生きています。
縁起の良いとされるものの中には、赤い色の護符や飾りを子どもに身につけさせるという習慣があります。これは「悪魔の目(イービル、アイ)」と呼ばれる邪視から身を守るためのもので、特に赤いリボンやビーズ、あるいは「ハムサの手」のモチーフがよく使われます。この迷信の起源は古代中東や北アフリカにまでさかのぼり、マルタが歴史的にアラブや地中海世界の文化と交流してきたことの影響を色濃く受けていると考えられています。また、聖人の像や聖水を家の入口に置くことで、家を悪霊から守り、幸運を招くと信じられている家庭も多くあります。特に聖パウロや聖アグネスなど、マルタにゆかりのある聖人が好まれます。
一方で、不吉とされる迷信もいくつか根強く残っています。たとえば、夜に爪を切ると死を招く、という迷信があります。これはヨーロッパ全体に見られる古い信仰で、夜の闇に紛れて悪霊が活動する時間帯に体の一部(爪など)を切ることが魂を傷つける行為とみなされたことに由来します。また、猫が道を横切るのを見ると不運が訪れると信じられており、特に黒猫が不吉とされるのは、魔女や悪霊と結びつけられてきた西洋の伝承の影響です。
さらに、夢に関する迷信もあり、歯が抜ける夢を見ると家族や親しい人の死を暗示していると考える人もいます。こうした夢占いは、昔から不安や直感を象徴的に表現する手段として用いられてきたもので、現代でも時折、年配の世代を中心に信じられています。また、13という数字に対する恐れ(トリスカイデカフォビア)も根強く、13日の金曜日は特に注意すべき不吉な日とされています。
これらの迷信の多くは、カトリック的な信仰と民間信仰、さらには古代ペイガン文化の影響が混じり合って形作られたものであり、マルタ人の精神文化の一部として現在も生活の中に息づいています。伝統を重んじるマルタの社会においては、これらの迷信は単なる昔話ではなく、日々の判断や行動に影響を与える「知恵」として受け継がれているのです。
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